木造建築物にとってシロアリは厄介な存在です。シロアリは古い建物に発生しやすいと思われるかもしれまんが、建てられてから数百年以上が経つ寺社仏閣でもシロアリ被害に遭わない建物は多数ありますし、新築の建物でもシロアリが発生することもあるのです。その違いと秘密にはどのようなものがあるのかを解説していきます。

目次

シロアリにとって快適な環境とは?

シロアリの発生を防ぐには、まずシロアリがどんな環境を好むのか把握しておく必要があります。シロアリにとって快適な環境とは、十分な食べ物と水分があることです。木材は住居でありながら食糧でもあるので、あとは水さえあれば繁殖する条件が揃うということになります。日本は木材建築が多く、湿気も多いため、シロアリにとって居心地のよい環境であると言えます。特に、浴室やトイレ、洗面所といった水回りはシロアリが発生しやすい場所です。他にも、ウッドデッキや庭木の根元、畑など、家屋の周辺にもシロアリが発生しやすい場所はいろいろあります。

木材には、ブドウ糖が豊富なセルロースが含まれています。セルロースは木材の細胞壁を形成する糖類で、シロアリにとって重要な養分になります。シロアリの腸内はセルロースを分解しやすくできているので、必要な養分を効率よく吸収できるのです。天井や床下の木材は雨水が浸み込みやすく、水分が摂れるので、シロアリが発生しやすい箇所です。建築上の過失や自然災害などで雨漏りが発生していたり、水回りから漏水があったりすれば、新築物件であってもシロアリが発生してしまうことはあります。

高床式寺社仏閣は通気性が抜群!

寺社仏閣には、数百年という長い年月を超えているものも多数現存しています。部分的に修繕されることもありますが、建築された当時のままの木材が残っているものも少なくありません。人が住んでいる建造物でも、江戸時代から残っている古い木造建築物は存在しますし、解体された古い住居から梁などの木材が再利用されていることもあります。このように、寺社仏閣をはじめ、日本の古い木造建築物は古くてもシロアリ被害が少ないのはなぜなのでしょうか。

寺社仏閣のほとんどに用いられているのが高床式です。高床式とは床の下に空間を設けた建築様式のことで、人がかがんで入れるほど床下が高い建物もあります。高床式の利点は風通しが良いことで、地面からの湿気を逃がしやすく、床下の蒸れを防いでくれます。湿気の多い日本の風土にも適した構造で、シロアリ被害を抑えている大きな要因の一つであると言えるでしょう。床下の通気性を良くしておけばカビの発生も防げますし、木材が朽ちてしまう予防にもなります。現代の住居にも床下に換気口は設置されていますが、床下が解放されている高床式とは、風通しの良さははるかに違います。

寺社仏閣は木材選びも工夫されている

寺社仏閣がシロアリの被害を受けにくいもう一つの要因は、使用している木材です。寺社仏閣を建造や修復を行う際には、現代でも木材選びは慎重に行われます。マツやヒバ、モミの木のようなシロアリが好む柔らかい木材は避け、ヒノキやスギなどが選定されています。特に、ヒノキにはシロアリが嫌う「ヒノキチオール」という天然の殺菌・防虫成分が含まれており、シロアリに強いと言われています。ケヤキのような固い樹木も寺社仏閣の建造によく使われてきた木材です。これらの樹木は寺院や神社の境内に生えていることも多く、建造物以外でもシロアリの侵入しにくい工夫がされていると考えられています。

一般の住居にも、ヒノキやケヤキ、サクラなどはスタンダードな木材として使用されてきました。建築資材としての強度を維持できるだけの十分な固さがありますし、解体した後でも木材として再利用できるほどの強度があり、需要が多いです。また、囲炉裏の存在もシロアリを撃退する効果がありました。囲炉裏から出る煙に虫除けの効果があることと、加熱された空気が天井や屋根に上がることで、天井や屋根に使われている木材の乾燥が促進されるからです。このように、寺社仏閣から住居に至るまで、日本の古い建物にはシロアリの発生を防ぐ知恵や工夫が見られます。

まとめ

家を新築する際に、シロアリに強い木材を使用することは有効なシロアリ対策になります。 しかし、シロアリに強い木材さえ使っておけば万全というわけではなく、日常的に換気をして湿気が高くなることを防いだり、防虫対策を施したりする必要はあります。今の時代に、高床式で家を建てることは現実的ではありませんので、現代の家の構造に合ったシロアリ対策を定期的に害虫処理業者に相談しましょう。