蜂の被害に関して、最も注意すべき症状としてアナフィラキシーショックという言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応の一種で、アレルゲンに対する身体の免疫機能が必要以上に働いてしまい呼吸困難や意識障害などのショック状態を引き起こすものです。
アナフィラキシーショックは最悪の場合、命を落とす可能性もある大変危険なものです。
食べ物や薬物などが原因で引き起こす場合もありますが、蜂の毒によってアナフィラキシーショックになる場合も非常に多いです。

しかし万が一アナフィラキシーショックを発症してしまっても、適切な対処法を知っておけば最悪の自体を避けることができます。
ここでは、蜂に刺されることの危険性やアナフィラキシーショック発症のメカニズム、もしもの時のための対処法などを解説していきます。

目次

刺された蜂の種類によって発症の危険性は変わる?

駆除の具体的な流れは?

一言に蜂と言っても、種類によって刺された時の危険性は異なります。
ミツバチやスズメバチなどの認知度が高い種類から、キイロスズメバチやコガタスズメバチ、オオスズメバチ、モンスズメバチ、アシナガバチなど
蜂には数多くの種類が存在し、それぞれ毒性の強さや攻撃性が異なります。
当然、スズメバチやアシナガバチなど毒性が特に強いとされている蜂は特に注意すべきですが、
アナフィラキシーショック発症に関しては単純に毒性の強さだけで引き起こされるわけではありません。
アナフィラキシーショック発症のメカニズムは後述しますが、毒性の強い蜂に刺されても発症しない場合もありますし、
逆に毒性の弱いミツバチに刺されてアナフィラキシーショックを発症してしまう場合もあるのです。

それは、同じ蜂という生き物でも、その種類ごとに毒の成分が異なるからです。
蜂の毒に含まれる主な成分は、ヒスタミンやセロトニンなどのアミン類、キニンなどの発痛ペプチド、
メリチンやアパミンなどの細胞膜作動性ペプチド、アナフィラキシーショックの原因となる高分子タンパク質などです。
それぞれが痛みや腫れ、神経麻痺を引き起こすものですが、ここで特に注意したいのはアナフィラキシーショックの原因になる高分子タンパク質です。
一言に高分子タンパク質といっても、プレテアーゼやフォスフォリパーゼなど多様なものが存在し、
それは蜂の種類によって含有量や含まれる成分が異なります。

そのため、蜂に二度刺されたとして、例えばミツバチとスズメバチのように毒の成分が大きく異なる蜂それぞれ刺された場合であれば
アナフィラキシーショックが発症する可能性は低くなります。
一方で、アシナガバチとスズメバチのように毒の成分が近い蜂に二度それぞれ刺されると、アナフィラキシーショックが発症する可能性が高くなります。
さらに、ムカデなどの蜂以外の昆虫でも同じような毒を持っているものがいるので、
それらの昆虫に刺された(嚙まれた)場合にもアナフィラキシーを発症する危険性があるので注意が必要です。

アナフィラキシーショック発症のメカニズムを解説

「蜂に二回刺されるとアナフィラキシーショックになる」ということも何となく聞いたことがあるのではないでしょうか。
これは確かにその通りなのですが、実は一度目に刺された時にもアナフィラキシーショックを発症する場合もあるので注意が必要です。
では、どのようなメカニズムで蜂の毒によるアナフィラキシーショックを発症するのでしょうか?

一度目に蜂に刺された時に、蜂の毒が体内に侵入してきます。
この時点で、蜂の毒に含まれるタンパク質が異物と身体の免疫細胞に認識され、
この異物に対応するための抗体を作ってしまう人(蜂の毒アレルギーになってしまう人)がいます。
一度目に刺された時は、刺された部位が軽く痛んだり、腫れたりしますが数日程度で治ります。

「そして二度目に刺された時は、一度目に刺された時に抗体を作った人(蜂の毒アレルギーになった人)と作らなかった人で危険性が大きく変わります。
抗体を作らなかった人は一度目に刺されたときと同様の症状が少し強めに現れる程度ですが、
抗体を作った状態で刺されてしまうと、アナフィラキシーショックを発症してしまう危険性が高くなります。
アナフィラキシーショックは抗体と蜂の毒が結合することで化学伝達物質を大量に放出してしまうことで引き起こされ、
一度目に刺された時から、二度目に刺されるまでの時間が短いほど発症する可能性は高いとされています。

一度目に刺された際に抗体を作らなかった人も、二度目以降はより抗体を作る可能性が高くなりますので、
蜂に刺されるのはやはり危険な状態といえるでしょう。

蜂の毒アレルギーの検査と治療について

蜂の毒アレルギー(抗体)を持っているかどうかは、皮膚科などの医療機関に検査を依頼し、
血液検査や皮膚検査を行うことによって調べることが可能です。
ただし、これらの検査を行っていない医療機関もあるので、事前に確認しておきましょう。
また、正確に検査するためには、蜂に刺されてからおよそ一か月程度の期間を置く必要があります。

蜂の毒アレルギーの治療は、対処的治療と根本的治療があります。
対処的治療とはその名前の通り、アナフィラキシーショックを発症してからの対処をするための治療方法になります。
保険適応内で、アナフィラキシーショックを発症時に唯一できる応急処置でもあります。
アドレナリンを体内に注入することで、ショック状態を緩和させることができますので、
検査で蜂の毒アレルギーを持っていることがわかっている場合には、
主治医にアドレナリン注射を処方してもらい携帯しておきたいところです。

根本的治療は、一部の専門医療機関で行われている長期的な治療方法です。
少量の蜂の毒を体内に注入し、少しずつ蜂の毒に対するアレルギー反応を抑えていくという治療法ですが、自由診療なので治療費がかかってしまいます。
日頃から森林部などに行く機会の多い方などで、蜂の毒アレルギーをお持ちの方であれば根本的治療を受けることをお勧めします。

アナフィラキシーショックの具体的な症状は?

ここまでアナフィラキシーショック発症のメカニズムや治療法を解説してきましたが、具体的にはどのような症状が現れるのでしょうか。具体的な症状を知っておくことで、蜂に刺された後の症状からアナフィラキシーショックを疑うことができるので押さえておきましょう。

・呼吸困難、咳、息苦しさなどの呼吸器系
・低血圧、動機、脈拍数の増加などの循環器系
・多尿、腹痛、吐き気など消化器系
・多尿、腹痛、吐き気など消化器系
・目まい、痺れ、痙攣、意識障害など神経系
・蕁麻疹や腫れ、かゆみなど皮膚系
・その他、無力感や不安感など

これらの症状が、刺されてから30分以内に見られれば早急に医療機関での処置を受けましょう。

蜂に刺された時の対処法

蜂に刺された時に、アナフィラキシーショックの症状が現れているかを確認する前にやるべきことがいくつかあります。
まずは蜂に刺された場所から速やかに離れましょう。
蜂はフェロモンを分泌して仲間の蜂を呼び寄せることができるので、絶対に蜂を刺激せずに10メートル以上は距離をとりましょう。

次に、傷口を水で洗い流しましょう。
毒を薄める効果も期待できますし、刺された部位を冷やすことで痛みや腫れを和らげることもできます。
できればこの後に虫刺されの薬を塗ることが望ましいですが、持ち合わせていなければ濡らしたタオルやハンカチ等で刺された部位を冷やしつつ、皮膚科等の医療機関へ行きましょう。
また、過去に蜂に刺されたことがある人は、先述したアナフィラキシーショックの症状が現われていなくても、
蜂の毒の抗体を持っている可能性があるので必ず早急に医療機関での診察を受けることをお勧めします。
アナフィラキシーショックの症状がみられた場合は無理をして動かず、安静にして救急車をよびましょう。
先述した対処的治療などで処置してもらうことで、生命の危険を回避することができます。

もし自分ではない周囲の人が刺された場合で、アナフィラキシーショックと疑わしき症状が見られ、
その人が過去に蜂に刺された経験があるかどうか不明な場合は、すぐに救急車を呼ぶべきでしょう。
アナフィラキシーショックは発症から30分以内に適切な処置を受けることができるかどうかで大きく危険性が変わります。
そのため、疑いがある程度の段階でも、医療機関に診察してもらい適切な処置を受けましょう。

まとめ

アナフィラキシーショックは最悪の場合、命を落とす危険性もある大変危険なものです。

一度目なら刺されても大丈夫という認識をお持ちの方もいらっしゃいますが、それは大変危険な考えです。
一度目に刺された時でもアナフィラキシーショックを発症する場合もあるので、
刺された回数を基準にするのではなく、呼吸困難や意識障害など具体的な症状が現われているかどうかで判断をしましょう。
アナフィラキシーショックは発症から30分以内に適切な処置を受けることができるかどうかで大きく危険性が変わります。
できる限りの迅速な対応と、少しでもアナフィラキシーショックの疑いがあれば無理をせず救急車等を呼び医療機関での診察を受けましょう。

また、蜂に刺された経験があるのなら医療機関で検査を受けることをお勧めします。
蜂の毒アレルギーを持っているかどうかを知っておくことで、
蜂に対する危機感も変わってきますし、処方してもらったアドレナリン注射を携帯することも可能です。
当然、最も理想的なのは蜂に刺されないことです。
自宅に蜂の巣を発見しても近寄らず、自分で蜂を駆除するような危険は冒さずに専門の業者に駆除を依頼するようにしましょう。
また、蜂がいそうな場所に行くとき(特に蜂が活発に行動する夏から秋にかけての時期)は黒色の服装を避け、匂いの強い香水やヘアワックスを使用することも避けるべきです。

この記事を読んで、蜂に刺される危険性を認識していただけると幸いです。
たかが昆虫だと侮らず、きちんと危険性を理解し不用意に蜂に近づかないようにしましょう。