ハチ(蜂)は非常に危険な昆虫として知られています。

しかし、ハチが人を襲うのは巣や仲間を守ろうとする防衛本能によるもので、やみくもに攻撃してくるわけではありません。
「攻撃を受けている」「外敵が巣に近づいた」と判断したときに、ハチは人間を威嚇し、襲ってきます。
また、ハチには攻撃的になる時期があり、種類によってもこの期間が多少異なってきます。

今回は、ハチの仲間の中でも「攻撃性・毒性・威嚇性」のいずれにおいても強い「スズメバチ」についてご紹介しましょう。
スズメバチの生態を知ることで、危険な場所や時期を避けることができます。

目次

スズメバチの種類と特徴

スズメバチの仲間は、世界に28種類、なんと日本にはそのうちの17種類が生息しています。北海道から沖縄まで全国に分布し、とくに北海道と本州の山岳地帯に生息地域が広がっています。

日本のスズメバチは、「スズメバチ属」の8種、「クロスズメバチ属」の5種、「ホオナガスズメバチ属」の4種に分類されています。
都市部や住宅地で遭遇するのは、ほとんどが「スズメバチ属」の7種のハチです。

7種の中でも特に注意すべきなのが、凶暴かつ昆虫界で最強の捕食者といわれている「オオスズメバチ」です。
ハチの中では最も体が大きく攻撃的です。樹木の洞や根元・土の中・屋根裏など人目につきにくい閉鎖空間を好んで巣を作るため、うっかり巣に近づいて襲われる事例が多発しています。

毎年の刺傷被害で一番多いのが、「キイロスズメバチ」によるものです。
その名の通り全身が黄色いのが特徴で、都会でもよく見かけるハチでしょう。
場所を選ばず巣を作り、そのサイズはスズメバチの中でも最大級です。

いずれのスズメバチにも、繁殖能力のある1匹の「女王バチ」とその能力を持たない多数の「働きバチ」、全体の1割程度の「雄バチ」が存在し、協同で子育てをするという共通点があります。
女王バチの寿命は約1年、働きバチは2カ月程度で死んでしまいます。

雄バチは女王バチと交尾することが唯一の役目であり、交尾を終えるとそのまま落下して息絶えます。

スズメバチの一生

スズメバチの被害は毎年秋に集中しているため、発生時期が夏から秋と勘違いしがちですが、実はスズメバチの巣作りは4月の終わりから始まっています。

越冬を終えた女王バチが適切な場所を見つけ、働きバチが羽化する1カ月~1カ月半の間、1匹だけで産卵・育児・外敵からの防御を行わなければなりません。

梅雨を過ぎると働きバチが成長し、女王バチは産卵に専念できるようになります。

7月~8月には幼虫を育てる巣盤の数も働きバチの数も増加して、巣は階層構造をもったものへと急成長します。

9月の繁殖期には、いよいよ新しい女王と雄バチの産卵が開始されます。
働きバチは攻撃的になり、巣に近づくものは容赦なく毒針で襲いかかり巣と仲間を守るのです。

秋に入ると、新女王バチと雄バチは巣を離れて移動します。
新女王バチは受精のうという袋がいっぱいになるまで雄バチと交尾を繰り返し、地中や倒木の中で冬眠して、春の訪れを待つのです。

スズメバチの危険な時期

スズメバチが最も危険となる時期は、次世代の新女王と雄バチの産卵・育成期間です。
巣の出入口には門番役の働きバチが見張りに飛び回り、巣の防衛力は最大限に発揮されます。

危険な時期は、スズメバチの種類や巣の発達状況に応じて異なり、例えば「オオスズメバチ」は8月~10月、「キイロスズメバチ」「コガタスズメバチ」では7月~10月に、巣の近くにいるだけで警告や威嚇なしに攻撃してくることが多くなります。

大人しい性質の「モンスズメバチ」や「ヒメスズメバチ」であっても、それぞれ7月~8月、8月~9月にかけて攻撃的になるため、不用意に近づくと集団で襲われかねません。

7月8月9月のカレンダー

簡単にできるハチ対策

スズメバチは他のハチに比べて危険な時期が長いため、7月から10月にかけて野山や自然の多い場所に行くときは、ハチ対策を忘れずにしておきましょう。

まず、巣を見つけたら、静かに立ち去ります。
大声を出したり、騒いだりしてハチの注意をひかないようにしましょう。

服装は長袖長ズボンなど肌の露出をなるべく少なくし、できるだけ色の薄いものや白色を着用します。
ハチは黒いものや色の濃いものに反応しやすいためです。

また、ハチはニオイに対しても敏感です。ヘアスプレーや化粧品、シャンプーなどの花やフルーツの香りはハチを興奮させるので、強い香りの使用は控えましょう。
もしものときに、殺虫剤や保冷剤・抗ヒスタミンの塗り薬など応急処置ができるものを用意しておくと安心です。

まとめ

近年、スズメバチは都市の環境に適応し、野山ではなく街中で巣をつくっています。
天敵の少ない環境で、生ごみなどから餌を得て急速に都市化し、それに伴って住宅街での刺傷被害も増加傾向にあります。

スズメバチの脅威が山間部だけではないことに留意しておきましょう。